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葬儀屋が見た、病院のコワ~イ話

 葬儀屋、はじめました。

GWに葬儀が増えるのは、なぜ?

 お葬式の繁忙期

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語る人=水野昭仁(さくらセレモニー代表)

インタビュー・文=朝山実

 

 

「連休前になると、立て込むんですよ。それは毎年ですね。だからこの時期、休んだことないですよ」


 というのは、葬儀屋をはじめて5年目のミズノ社長。スタッフ10人未満の零細ながら、全員が「正社員」というのは、業界では珍しい。特筆しておきたいくらい。なぜなら、いつ仕事が入るかわからない。たいてい、非正規雇用や、仕事があるときに外注するのがフツーな業態だからだ。

 なぜ創業以来「全員が正社員」という雇用形態を選択しているのかは、おいおい聞いていくとして、この連載は神戸と大阪に挟まれた関西のローカルタウンを拠点とする「町の葬儀社」の社長に話を、ライターの朝山実が聞いていくインタビュー録です。


 さて。連休前半のある夜。ミズノ社長に電話するとつながらず、しばらくして返電があった。

「スンマセン!! 忙しいんですわ。今晩もね、これからお迎えに行かないといけないんです」

 疲れた声だった。
 仕事はないと困るが、ありすぎるとまたシンドイ。しかし、ネガティブな顔色はお客さん(ご遺族)の前では見せない。プロなら、ぜったい。落ち込んでいる人をさらに沈ませる。ということは、電話の向こうの社長は気を許してくれているということになのか。
 この日の夜、ミズノさんが帰宅した頃に、このインタビューをはじめる約束をしていた。開口一番、それができなくなったと言う。

「お迎え」というのは、病院から通夜の場所まで、寝台車でご遺体を移送することを指す。依頼の電話が入るのは、時間を問わない。「24時間、365日フル稼働」の業界だ。とりわけ、ゴールデンウィークの前後は通常よりも件数が急増するという。

「なんで? うーん……そうやねぇ、それは、ちょっとした加減でね、身体が弱っているお年寄りとかだと、すごいダメージになるでしょう。たとえば、部屋の温度が2度3度上がっただけでも、ふつうの人なら、たいしたことがなくてもね。ちょっとのことで体調が急変したりする、そういうことがありますよね」

 社長の説明は、痒いほど遠まわしだった。察するところ、大きな声ではいえないが、患者さんを送り出すために病棟の空調を調整しているところがある、かもしれないという。

「確証はないですよ。確証は。だけど、どこの葬儀社も連休中忙しくなる。ずいぶん昔からの都市伝説です。想像というか。そう言われているというか。ボクも実際、現場を目にしているわけではないので、あくまで伝説ですけどね。
 ただ、世間の人が揃って休む時期の前後になると、なぜか亡くなる人が増えるっていうのは本当で、これは何かあるんじゃないかと思うてもね、不思議やないでしょう」


 まあ、そうだ。実際、連休前後に「お迎え」が増え、病院に到着し忙しなくやりとりをしているときに担当医が不在というケースがしばしばだという。
 医者も激務である。世間並みにゆっくりしたい、ほんの数日でも仕事のことは忘れたい。素人ながら、その心理もわかる。そこで、微妙に前倒しを……と考えたとしても軽々に責められるものかどうか。微妙すぎるサジ加減がうまくゆかないのか、連休後の「お迎え」も多いという。
 もちろん、これらは想像。「都市伝説」の域を出るものではない。それでも、ミズノ社長が指摘するように、ある限られた時期に、葬儀件数がグンと平均値よりも上回っている。これが事実だとしたら、「何かあるのかな」と思って当然だろう。


「増えるということで言うたら、クリスマスとか年末年始もそうですよね。お正月のときに、ウチみたいな小さいところでも、ご遺体を6体も7体も(火葬場の順番待ちで)お預かりしていましたから。ウチが特別ではなくて、ほぼほぼの葬儀社は、年末年始は複数のご遺体を預かっておられます。それは地域に限らず、全国的なことじゃないですか」

 ミズノ社長いわく、ご遺体が出た場合、その場に主治医がいるかいないかで「病院がわかる」。

「病院によっては、ボクらがお迎えにいくでしょう。ゴールデンウィークとか年末年始、お見送りのときに、看護士さんしかいない病院が多いですからね。メインの先生の姿はなくてね。
 逆にだから、ココとココはそういう時期でも、ちゃんと主治医の先生が残っていて、良い病院やなぁというふうに思ったりします。
 あ、でも、いま言うたの、書きます? もしかして。
 ……書いてもいいんですけど、デタラメは言うてませんから。ただ、確証なし。あくまでも都市伝説ということで。ただ、ホント、この時期は決まって忙しくなるんですよ。まあ、そういうことで。本日は、ありがとうございました」

 

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☝写真左は洋型霊柩車のレクサス。右は同リンカーン。寝台車と霊柩車の専門会社からはじめ、現在、霊柩車は3台。寝台車が2台。すべて細かくカスタマイズされている

 

 ということで、不定期ながら連載していきます。

 

イラストレーション= KUM
写真撮影=山本倫子yamamoto noriko